前回、僕の生い立ちからベンチャー業界に入るまでをお伝えしたが、今回はその後編。ベンチ ャー企業に転職してから、起業、そして現在のイノーバに至るまでのストーリーだ。まさに 「点と点を線でつなげる」というスティーブ・ジョブズの言葉のように、後の起業につながるヒントを、僕はここで見つけていく。
前編はこちら↓
■マーケティング経験ゼロだった僕が、プロになるためにやったこと
僕が転職した企業はネクスパス(現:トーチライト)。社員はたった 4 人。そして、僕が入社した頃はちょうど、「SNS が未来のインフラになるんじゃないか」と言われていた時だ。今より SNS を使っている人は少なかったが、僕は可能性を感じていた。 そして、ネクスパスへの転職を決める際に僕は、上司と「図書費 50 万」という約束を取り付け ていた。「給料は上げられないけど、図書費ならいいよ。」と当時の上司が言ってくれたのだ。
それまで、マーケティングについて少しは触れたことがあったものの、全く違う分野でキャリアを積んでいたため、その図書費で、一から勉強を始めた。 僕がやったことは、マーケティングの書籍を買い漁り、人に会って、話を聞くこと。
そうするうちに、「どうやらマーケティングは、アメリカの方が進んでるようだ」と思い、 かなりの数のマーケティング関連の洋書を読んだ。また、ネクスパスの基幹業務である、ソー シャルメディアマーケティングは、アメリカ発の手法だったので、英語での資料はかなり豊富だった。僕が非常に重要視している「英語で情報収集をして、最先端の情報をいち早く手に入 れる」という戦略も、この時代の経験から作られたものだ。
■ベンチャー企業で見つけた、イノーバに繋がる 2 つのヒント
振り返って考えてみると、こうした勉強や、ネクスパス時代での業務経験を通じて、後のイノ ーバに繋がるヒントを、僕は見つけていた。 まず 1 つは、「世の中の流れの変化」。ソーシャルメディアやマーケティングについて没頭して調べ、勉強をするうちに、「SNS が世の中に与えるインパクトは思っている以上に大きい」 ということに気が付いた。
SNS の普及をきっかけに、世の中の「モノが売れる流れ」「情報の流通の流れ」が大きく変わ った。少し前では、この 2 つの流れで大きな力を持っていたのは、マスメディア。テレビや雑誌、新聞から最新の情報が発信され(あるいは、商品が宣伝され)それを人がキャッチする、という流れだった。しかし、SNS の普及とともに、この流れが逆流する。SNS で起きた口コミをマスコミが拾うようになり、「モノの売れ方」も大きく変わった。
そして、この傾向が加速するにつれ、口コミの信憑性も上がってきた。 そこで僕が思ったことは、「今の SNS 時代でモノ売るためには、口コミ経由で流通させるべき。それには、企業のコンテンツ力が絶対に必要だ」ということ。この時に勉強し、得た気づきや考えが、後のコンテンツマーケティングにつながっていった。 もう 1 つ起業に繋がったヒントは、「営業」だ。僕がネクスパスにいた頃、アメリカでは、ソ ーシャルメディアマーケティングのベンチャー企業が山のようにあった。僕の仕事は、それら のベンチャー企業を周り、契約をして、そのサービスを日本の企業に売ること。
しかし、色々な日本企業を営業して周ったが、全く興味を持ってもらえなかった。むしろ、かなり冷たく対応されてしまったこともある。1 時間のミーティングで、ソーシャルメディアを活用したマーケティングの必要性や重要性を説明して、契約してもらうことは、ほぼ不可能な状態。手法が新しすぎる為、どんなに話してもピンと来ていないようだった。 相手に興味を持ってもらって契約してもらうには、何をするべきなんだろう? 今のアウトバウンド型の営業が効かないなら、どうすればいいんだろう? そう考えた僕がたどり着いたのが、コンテンツマーケティングだった。
■貯金はゼロ、借金もある。それでも僕が起業したかった理由
「アウトバウンド型の営業が効果がないなら、逆に向こうから入ってくる仕組みを作れないだろうか。」そう思った時に見つけたのが、インバウンドマーケティングの本。そして、どういう記事だとシェアされやすいのか、どんなテーマだと読まれやすいかなどを、実際に自分でブログを書いて、研究を重ねた。今から 13年ほど前の話だ。
インバウンドマーケティングや、アメリカのマーケティング事情についての勉強を進めていく と、自然とシリコンバレーや、ベンチャー業界の情報にも詳しくなっていった。また、アメリカの起業事情を学び、仲間内で勉強会を開催するうちに、僕の起業に対する考え方も、少しずつ変わり始めたのだ。僕が今まで持っていたのは、日本のサラリーマン的な世界観。「自分で起業する」ということは、とてつもなく大変なこと、というイメージが強かった。
しかし、アメリカのベンチャー業は、「ベンチャーが新しい産業を作って、上場もしくは大企業に買収され、新しいビジネスになっていく」という、非常にダイナミックな世界だ。実際に、ネクスパス時代に繋がりのあったベンチャー企業が、大手企業に買収されたこともあり、僕はその規模の大きさを目の当たりにした。そしてそれは、僕が今まで知らなかった世界。 また、アメリカのシリコンバレーなどでは、起業する際のマニュアルやブログ、体験談なども豊富で、起業に対するハードルもかなり低い。
さらに、ベンチャーのロールモデルも多いの で、参考にする資料には事欠かない。 そして徐々に、「起業には成功法則も失敗法則もある。失敗しても、それを最小限に押さえる方法もある。上手くいくか分からないけど、まずは自分で起業してみよう。」こう考えるようになっていった。 しかし、問題なのは起業資金。前編で話した通り、僕は富士通を辞める時に、留学資金の返済 の為、借金をして退職をしていた。
よって、この時の僕には貯金はほぼなし(借金はあり)。 それでも僕が起業したかった理由。それは「社会を変えたい」という強い想いがあったからだ。この頃から、「日本で起業を増やしていくことは、大きく社会を変えるきっかけになるん じゃないか」と思っていた。 日本では、少子高齢化や規制緩和について、長い間議論が交わされているにもかかわらず、結局は何も変化を起こせていない。
ベンチャー企業が増えれば、雇用も創出できる。より良い社会にする為の、変化をもたらしたい。こういう気持ちがあった。 考えた末、僕はカードローンで 500 万円を借り、それを起業資金にした。そして、ネクスパス時代の恩で頂いた仕事を細々と続けながら、起業のネタ探しを始めたのだ。
■試行錯誤を繰り返した末に、見つけた答え
ようやく起業した僕だったが、試練はまだしばらく続く。まず僕は、アメリカで流行っている ベンチャー企業を片っ端から調べた。そしてその内、自分が興味のあるものをいくつか絞り込んで、日本でも同じようなビジネスモデルを展開しようと、試してみたのだ。しかし、3 つか 4 つ試したが、どれも全然うまくいかなかった。
今考えると、この頃の失敗の原因は、明らかだ。まず、ビジネスを「どれだけ儲けられるか」 という、とてもよこしまな基準で選んでいた。特に僕は、エンジニアや営業マンなど、特別なスキルを持っていたわけではない。僕のような普通のサラリーマンが、起業して成功するには、自分の想いを伝え、共感してもらい、動いてもらわなくては、何も始まらない。そのこと に、この頃の僕はまだ気付いていなかった。
いくつかのビジネスを試しては失敗し、カードの借り入れも増えるばかり。「これ以上、勝負するのはしんどいぞ」といよいよ進退窮まった時に、ある友人の言葉で、最後の勝負に出る決意を固めたのだ。それが今のイノーバの要となる、コンテンツマーケティング。
僕が試したビジネスの 1 つに、ワインの輸入業務がある。「アウトバウンド型営業は、今の時代に効果的ではない」ことを、身をもって感じていた僕は、起業してからも自分のビジネスで使う為に、コンテンツマーケティングにはずっと興味を持ち続けていた。だからこの時も、 「ワインのコンテンツを増やしていけば、問い合わせも増えるんじゃないか」と考えていたの だ。
「じゃあ、そのコンテンツマーケティングのノウハウを、お客さんにも提供してみたら?」 この友人の一言がなかったら、今のイノーバはなかったかもしれない。
■多くの人に喜んでもらえるビジネスを作りたい
コンテンツマーケティングと言っても、ビジネスモデルは白紙の状態。とにかく最初の頃は、 コンテンツの受託制作をすることで、何とか売上を立てていた。しかし、コンテンツをただ受託制作するだけでは、ビジネスとしての拡張性に欠ける。 さらに僕には以前から、中小企業を支援するような、ソフトウェアをお客さんに届けたいという、想いがあった。
ただ、海外で販売されている既製品の販売だけでは、サポート面が不足してしまうし、収益を上げることも難しい。だから、自分でなんとかソフトウェアを作りたい。 こんな風に思っていた。「コンテンツマーケティングを支援するソフトウェア。これが実現できたら、もっと多くの人に喜んでもらえるビジネスモデルを、作れるんじゃないだろうか。」
今のイノーバのビジネスモデルは、僕のこんな思いから始まった。 その後は、コンテンツの受託制作を続けながら、ソフトウェアの開発をし、ベンチャーキャピ タルから資金を調達する・・ということを、何度も繰り返した。この間にも、もちろん失敗は数多くあり、決して順風満帆ではなかった。
しかしビジネスを続けていく内に、「確実に当た りに近づいている」という確信はあった。そして徐々に、「BtoB のセールスマーケティング」 に注力するようになり、それに伴ってイノーバ全体のサービスのレベルも向上。イノーバは、 ようやく軌道に乗り始めたのだ。
■グローバル化時代だからこそ活きる、イノーバの強みとは?
今では社員や監査役の方々を初め、多くの人に支えられ、会社として成長を続けているイノー バ。しかし、創業した頃は、社員は僕一人。シェアオフィスからのスタートだった。 だからこそ、僕しか知らないイノーバのストーリーがある。そして一緒に高い目標を目指す仲間には、是非そんなストーリーを知って欲しいと思い、記事に取り上げた。
今、世界はグローバル化の時代。このグローバル化のトレンドに、個人も企業も、不可抗力的に巻き込まれていくだろう。今では、大企業だけでなく多くの中小企業も、海外マーケットへ の進出の必要性を、感じている。そこで必要になってくるのが、イノーバの強みでもあるグロ ーバル標準のマーケティング。このグローバル化の流れは、イノーバにとって大きな追い風になる、と僕は確信している。
■イノーバの目指すミッション、ビジョンとは?
イノーバのミッションは、「企業と人にイノベーションの力を与える」。これからの 100 年は今までの 100 年以上に変化が常態化していく。変化出来なければ生き残れないが、逆に変化の波に乗れば、大きなチャンスを掴める時代。僕は、そう考えている。イノーバは、そんな変化が前提の時代にあって、「企業と人」に、イノベーションを通じて、「チャンス」を提供する存在になりたいと思って居る。
イノーバのビジョンは、「国境も、常識も超える“マーケティング&セールス”をつくり続ける」という事だ。マーケティングとセールスは、ビジネスにおいて売上・利益の源泉だ。良い製品を作っても、お客さんに届けなければ意味が無い。僕らは、世界最高のマーケティングと セールスを提供して、クライアント企業のビジネス成長を実現する。それを通じて、世界に雇用を生みだし、社会の課題を解決する事を目指している。
インターネット人口は 35 億人になっている。Google は、2020 年までに全世界 70 億人をインタ ーネットに繋ぐと言っている。世界の人がインターネットという同じ仕組みでつながる。これは、いままでの人類の歴史に無かった事だ。僕らは、自らが常にイノベーションを起こし続 け、世界を良い場所に変える、そういう存在を目指している。
コメントを残す